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内縁とは,結婚する意思のもとに夫婦共同生活を営んでいるものの,婚姻届を提出していない関係をいいます。交際中の男女の単なる同棲なのか,それとも内縁なのかは次の点から判断されます。
①互いに夫婦として生活する意思があるかどうか
②夫婦と変わらない精神的・肉体的・経済的実体があるかどうか
具体的には,どのくらいの期間共同生活を送ってきたか,生計が一つであるかどうか,共有の財産はあるか,子どもがいるか・共同で養育しているか,婚姻届を提出する意思があったかどうか,外部に対して夫婦としてふるまっていたかどうかなど,様々な要素から判断されます。
よく,「同居期間が5年を超えたら内縁になるんですよね?」などという質問がありますが,同居期間だけでは判断されません。現に,同居期間が1ヵ月でも,それ以前に結婚式を挙げている事例で内縁関係が認定されている例があります。逆に同居期間が長くても,当事者間であえて婚姻しないことを合意しているようなケースでは内縁にはならないでしょう。
交際中の男女にとって,婚姻届を提出し,夫婦として生活を共にすることも,あるいは婚姻届を提出せず,いつでも別れられる状態で交際を続けるのも,それぞれのカップルの自由です。つまり,婚姻届を提出していないということは,そのカップルが,夫婦としての法的な保護を求めないことを自ら選択しているといえます。
従って婚姻届を提出していないカップルの場合,男性・女性のどちらかから一方的に関係を解消しても,相手に対して何も責任は負わないのが原則です。
とはいえ,単なる交際関係ではなく,主観的にも客観的にも夫婦同然の状態である場合,婚姻届という形式的な手続を踏んでいないだけで,一方的に関係を解消できるというのはいかにも不合理です。
そこで判例上,主観的に婚姻の意思があり,客観的に夫婦同様の状態にある場合には,その関係を一方的に破棄することについて不法行為責任を負うとされているのです。
内縁と認められた場合には,婚姻関係と同様に以下の権利が認められます。
①扶養・協力・同居義務 夫婦として互いに協力し,扶養しあい,同居する義務があります。婚姻費用(生活費)の分担義務も負います。
②貞操義務 第三者と不貞行為を行ってはいけません。
③日常家事債務の連帯責任 共同生活上発生する債務について連帯して責任を負います。
内縁関係を解消する場合には,婚姻関係にある夫婦と同様に財産分与を請求できるとされています。財産分与とは,婚姻中に夫婦で協力して形成した財産を清算するものですので,内縁関係であっても同様に,清算を求めることができます。
残念ながら,内縁の妻に相続権は認められません。生前に内縁関係を解消する場合には財産分与を請求できるのに,不平等に感じられますが,相続の場合には他の相続人との関係もあり,画一的に処理する要請があるためと考えられています。従って,内縁の妻に財産を残すには遺言を書いておくしかありません。
内縁の妻に相続権が認められないことに関連していくつか問題となるケースがあるのでご紹介します。
賃借権は相続の対象となるのですが,内縁の妻には相続権がないため,内縁の夫が亡くなると追い出されてしまいそうですが,最高裁の判例上,内縁の妻は相続人が相続した賃借権を援用することができる,つまり,「自分は賃借人ではありませんが,相続人が相続して賃借権は生きていますからこのまま住みつづけます」と主張することができるとしています。
死亡退職金の受取人の第一順位は「妻」となっていることが多いのですが,内縁の妻は受け取ることができるでしょうか。この点,死亡退職金は相続するものではなく「妻」自身の権利であり,内縁の妻も「妻」に含まれるので受け取れる,という判例があります。
内縁関係は当事者の合意によって解消することができますが,内縁関係を正当な理由なく一方的に破棄した場合・破たんさせた場合には,不法行為にあたり,慰謝料の対象となります。
慰謝料の相場は、内縁関係の期間、内縁破棄の理由、精神的苦痛の程度、子供の有無、年齢、社会的地位、支払う側の資力、内縁破棄後の生活状況などが考慮されますので一概には判断できません。
浮気が原因で内縁破棄になった場合のように、第三者(浮気相手)にも責任がある場合には,第三者に対しても慰謝料請求することができます。
内縁破棄の慰謝料請求方法は、婚姻関係がある場合の慰謝料請求と同じですので、こちらをご覧ください。
内縁破棄で慰謝料請求する場合、相手方から「単なる交際関係で内縁ではない」と主張されることが往々にあります。
ですので、単なる同棲ではなく、内縁関係であることを証明する必要があります。内縁関係を証明する方法としては、続柄に夫(未届)、妻(未届)と表記されている住民票、配偶者もしくは内縁の妻と書かれたマンションの契約書,被扶養者となっている健康保険証,定期的に生活費が送金されていることを示す通帳,宛名が連名になっている郵便物,結婚式を挙げている場合には写真などが考えられます。できるだけ客観的な資料が望ましいですが,ない場合には両親,親族,知人・友人の証言でも有効な場合があります。
内縁破棄で慰謝料請求をお考えの方は当事務所までご相談ください。
※コンテンツ内で事例をご紹介する場合、作成当時の法律に基づきますので最新の判例と異なる可能性があります
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