夫の実家との関係といえば,嫁・姑問題がすぐに思い浮かぶのですが,意外にご相談が多いのが夫の父親(舅・義父)からのセクハラ問題です。
当事務所では女性からの離婚相談を数多くお受けしておりますが,夫の父親(舅・義父)からセクハラを受けている・過去に受けたことがあるという訴えを少なくない方からお聞きしています。
・夫がいない時を見計らって,同居している舅が体を触りに来る
・荷物を持ってあげるなどと言いながら体を寄せてくる
・風呂に入ろうとすると間違えたふりをして入ってくる
・何か物を妻の体にぶつけて,「大丈夫?」と言いながら妻の体をさする
・子どもに授乳していると,動けないのをいいことに背後から抱きついてくる・胸を触る
・独居している舅が家事を手伝ってほしいと言うので行くと「お金をあげるから」と言われ性交渉を求められた
・メールで頻繁に食事や外出に誘われる
夫の父親によるセクハラ行為は夫に相談がしづらく,今まで夫に話したことがないという妻も多いようです。その結果,事情を知らない夫は「妻が自分の親を邪険にしている」と思い込みます。
そのうち,妻に用心されてセクハラ行為を行えなくなった舅が「あの嫁はなんだ」「自分は親切にしてやってるのに」などと夫に文句を言いだし,ますます夫婦関係に亀裂を生じます。
夫に強く問いただされて,やむなく妻が舅のセクハラを訴えると,「うちの親がそんなことするわけないだろ」「おかしな言い訳をして,そんなにうちの親との付き合いが嫌なのか」などとかえって騒ぎが大きくなる場合もあります。セクハラ行為ははっきりした証拠が残ることが少なく,妻の思い込み・誤解・意識過剰などと片付けられることも少なくありません。
人間は誰しも,自分に都合のいいように物事を解しがちなものです。このため,妻が思い切って夫に舅のセクハラの事実を訴えても,夫は「実家との付き合いが面倒な妻が言い訳をしているにすぎない」と思い,妻の訴えに真剣に応えようとせず,そのことで妻の夫に対する気持も悪化していきます。
舅のセクハラ行為自体は,注意すれば避けることができ,それ以上の問題には発展しないケースが多いのですが,それをきっかけに様々な夫婦の不和を呼び,離婚に発展する場合があるのです。
舅のセクハラにまつわる離婚のご相談のケースでは,夫自身が父親のセクハラについて妻から聞いている場合と聞いていない場合があるのですが,相談者の方の多くは,「言い出したら夫や夫の両親から何を言われるのか分からないので、事実を話さずに離婚をしたい」「自分の親にも知られたくない」「裁判所のような公的な場所で第三者に話すのは苦痛だ」などとおっしゃられる方が多くみえます。
中には、訴訟をしてでも舅に慰謝料請求をしたいという方もいらっしゃいますが、多くの方はこの問題に触れることなく離婚を成立させることを望んでいるようです。その場合、夫が離婚に合意してくれれば離婚できますが、夫が離婚に同意しない場合には,夫の父親のセクハラ行為を除いて,離婚原因となりうる事実がないかを検討する必要があります。
場合によっては,相当期間別居を継続するというのも一つの方法です。別居しても夫婦には互いに生活を扶助しあう義務がありますので,夫に対して婚姻費用(生活費)の支払いを求めることができます。
状況によって,夫が「別居して婚姻費用を支払い続けるより,離婚に応じたほうが得だ」と判断して離婚に応じてくれることも考えられます。
当事務所では、どのようにすれば夫が離婚に応じてくれるか、相談者様のご希望に沿った形で解決方法を一緒に考え、ご提案します。被害に遭ってどのように対応すれば良いかお悩みの方は、一人で悩まずにまずは弁護士にご相談ください。