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モラルハラスメント(モラハラ)とは,精神的な暴力,嫌がらせのことです。 離婚問題では,家庭内での配偶者間の精神的な暴力,いじめのことを指します。
ドメスティックバイオレンス(DV)とは違い、実際に暴力を振るわけではないのですが、言葉や行動、態度によって相手に精神的苦痛を与えます。
夫の方が経済的,肉体的に優位にあるのが通常ですので,モラハラの加害者は夫であるのが一般的です。 夫が,妻に対して威圧的な言動を行い,妻に恐怖心を抱かせて,自分の意のままに操るようなケースがモラルハラスメントです。
当事務所にご相談に来られる方の中にも、モラルハラスメントの被害者が多くおみえになります。 実際にモラルハラスメントの被害を受けている方のお話を伺うと、ご自身では被害を受けていることに気付かなかったという方が多く見受けられます。本や雑誌のコラムを読んだり、知人・友人から指摘されて,ようやく自分が被害者であることに気づく方が多いようです。
モラハラの加害者は,外ではとても礼儀正しく,地域や職場などでは「愛想がいい」「礼儀正しい」「子どもをかわいがっている」「感じが良い」との評判を得ていることがあります。 これは,モラハラの加害者に自己顕示欲の強いタイプの人間が多く,周囲の人間から「仕事ができる」「才能がある」「優秀である」と見られたいと思っているためです。
モラハラの加害者は,自己顕示欲を常に満たすため,家庭内で自分より弱い立場にある妻に対して,「俺は上の人間から目を掛けられている,そういう自分と結婚できてお前は幸せだ」「普通は俺の年齢でこんなに給料はもらえない。こんないい暮らしができるのは俺のおかげだ」などといった自慢を繰り返します。
自慢くらいは聞いてあげればよいのですが,モラハラの加害者はさらに,自分が妻よりも優れた人間であることを妻に思い知らせるため,妻の人格にかかわるような言動をします。
「お前は大したこともできないくせに,俺のおかげでいい暮らしをしている」
「俺の子どもをお前みたいなバカに育てたら許さないからな」
「お前は専業主婦しかできないくせに,食事もまともに作れないのか」
「俺と同じくらい稼いできてみろ。それができないうちは俺に向かって口をきくな」
「お前は俺の奴隷なんだ。何を言われてもすぐ『はい』と言え」
「お前みたいなやつは,俺が結婚してやらなったら誰とも結婚できない」
「お前は俺より下の人間だから床で寝ろ」
このように,配偶者を見下した発言を繰り返すのはモラハラの特徴です。
モラハラの加害者の特徴として、何か問題が起こった場合、自分の非を認めません。 これは自己顕示欲が強いことと関係しています。自分は優秀な人間であり,自分より下等な人間である配偶者に対して自分に非があるなどとは認められないのです。
良くあるケースとしては,浮気が発覚した際,「浮気をさせるようなお前が悪い」「お前が性交渉を拒否したから外でしてきたんだ。お前が慰謝料を請求するなら,こっちは性交渉拒否で慰謝料を請求してやる」などと,相手に責任転換します。
また,浮気について口論しているのに,妻の家計の管理について問題にしたり,過去の妻の言動について非難し始めるなど,話をすり替えるという行動も目立ちます。 さらに,妻ががんばって夫に責任を認めさせても,数日たつとそれを忘れ(あるいは忘れたふりをし), 「そんなことを自分が言うはずがない」「証拠でもあるのか」などと平気で開き直る場合もあります。 このように,自分の間違いが明らかでもそれを認めないというのはモラハラの特徴です。
突然怒り出すことがあるのも,モラハラの加害者の特徴です。
脈絡なく怒鳴られれば誰でも驚きますし,特に自分より力の強い夫に大声で怒鳴られれば,強い恐怖心を感じて当然です。
モラハラの加害者は,定期的に怒ることで配偶者に恐怖心を植え付け,「また怒鳴られるかもしれない」 「今度は手を出されるかもしれない」と常に相手を畏怖させることで,家庭内で優位に立とうとします。 怒る原因がささいなことであるほど,相手を怖がらせ,自分の優越心を満足させることができるため,ほとんど理由と言えないようなことで怒り出します。
・お風呂に入っていたらシャワーの音がうるさいと突然怒鳴られ,お湯が出るスイッチを切られた
・買ってきた茶碗が気に入らないと言いだし,突然壁に向かって投げつけて割った
・魚料理を2日続けて作ったら大声で怒鳴られ,肉を買いに行かされた
・朝食にコーヒーメーカーでコーヒーを入れて出したら,まずいから今日中にコーヒーメーカーを買い替えろと怒鳴られた
・夫が風呂から出たときにパジャマの準備ができていなかったことに激怒して30分も床に正座させられて怒鳴られ続けた
・夜中に蚊が出たことを妻のせいにして,大声で妻を呼び起こし,妻に蚊を探させて自分はさっさと寝た
このような,はたから見るとあきれるような話がモラハラの事案ではたくさん出てきます。予想もしないようなことで突然怒鳴られる被害者にとっては,日々不安と恐怖の連続です。
モラルハラスメントは家族内という人間関係の中で行われるため、周囲には気付かれにくいのが一般的です。また、モラハラの加害者は見た目はとても穏やかな人である場合が多く、周囲に対しては「いい夫」を演じているので、周囲にはなかなか理解してもらえないこともあります。
モラルハラスメントの被害者の多くは,長い間加害者から心理的圧力を加えられたことで,「夫が怒ることが分かっていながら怒らせる自分が悪い」「自分は夫に離婚されたら生きていけない人間だ」「自分さえ我慢すればいい」などと思い込まされており,自分が被害者であることの自覚がありません。
ですが,そもそも夫婦とは愛情で成り立つ関係であり,互いを尊重し,思いやる心がなければなりません。 一方が他方を抑圧し,支配する関係にある家庭で,幸せな人生を送れるでしょうか。また,そのような家庭で育つ子どもは,将来どんな家庭を築くことができるでしょうか。
まずは被害者が,自分がモラルハラスメントの被害者であることを自覚し,そして加害者である夫に,自分がやっていることがモラルハラスメントであることを自覚させなければなりません。
残念なことに,モラルハラスメントの加害者が態度を改めることは稀です。 状況の改善が難しい場合には,離婚も選択肢になるでしょう。
当事務所にはモラスハラスメントで悩まれている多くの方がご相談に来られます。離婚に踏み切るかどうかも含め,一人で悩まずにまずはご相談下さい。
※コンテンツ内で事例をご紹介する場合、作成当時の法律に基づきますので最新の判例と異なる可能性があります
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