妻が夫の不貞の証拠となるメールのやり取りを突きつけたところ,夫がその場で携帯電話を壊してしまい,その後夫は不貞の事実を全面的に否定して争った事例です。
当事務所より,夫と不貞相手の女性に対し慰謝料請求訴訟を提起しましたが,裁判でも両者は不貞の事実を認めなかったため,当事者全員を尋問する手続を行いました。
妻の供述内容が真に迫っており,矛盾がないのに対し,夫の供述はそれまでに裁判に提出されていた書類の内容と矛盾していたり,不自然な内容に終始したため,裁判所は不貞の事実を認定し,妻の請求を全面的に認めました。
この結果は夫の職場にも知られ,夫はその後退職を余儀なくされました。当初から責任を認めていればこのような不利益を受けることもなかったのに,自業自得とはいえ残念な結果でした。
コメント
不貞の証拠としては,メール,写真,録音テープなどの証拠が一般的ですが,本件ではそれらの直接的な証拠が何もありませんでした。
ただ,夫が「自分がすべて悪い」と認める会話が残されていたこと,妻が証拠を発見した当時の様子を詳細に記録し,迫真性のある説明を法廷で行ったことが結果に結びつきました。
このように,確実な証拠がない場合でも,事実の蓋然性が認められれば主張が認められる場合があります。
2014/06/06